声だけの音楽が、言葉を残す場所になるまで

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アカペラの音楽賞というと、まず思い浮かぶのは、難しいアレンジや驚くようなボイスパーカッションかもしれません。もちろん、声だけで音楽を組み立てる技術は大きな魅力です。でも、台湾の先住民族メンバーによるO-Kai Singersの歩みをたどると、賞に何度もノミネートされる理由は、技術のすごさだけでは説明しきれないと感じます。

O-Kai Singersは2004年に結成され、デビューからわずか2か月で台湾国際コンテンポラリー・アカペラ・フェスティバルの最優秀賞を獲得しました。最初から長い準備期間があったわけではありません。声を合わせて始めた活動が、早い段階で大きな舞台につながったのです。

その後、グループは台湾だけでなく、香港、中国、オランダ、オーストリア、イタリア、アメリカ、カナダ、日本、韓国、シンガポールなどで公演を重ねました。活動の広がり方だけを見ると、コンテストで勝つためのグループが、海外へ進出していったようにも見えます。

けれど、O-Kai Singersの音楽には、競技の結果だけでは収まらない軸があります。メンバーは台湾の先住民族で、2023年のアルバム『Those Days』では、タイヤル、アミ、サイシャット、ブヌン、パイワン、ツォウの六つの先住民族言語で歌っています。アルバムは最優秀先住民族言語アルバム部門を含む複数部門にノミネートされました。

ここで大切なのは、先住民族の言語を「珍しい素材」として飾っているのではなく、暮らしや時間の流れを歌う音楽の中に置いていることです。『Those Days』のテーマは、誕生と成長、仕事、人との関係、そして死へ向かう「人生の循環」。タイヤルの教えから、困難に向き合うときの粘り強さ、落ち着き、勇気を受け取り、声を重ねて人生の後戻りできない道のりを表現したと紹介されています。

アカペラは、楽器を使わない音楽です。だから、何を演奏するかだけでなく、誰の声で、どの言葉で、どんな記憶を運ぶかが、そのまま作品の中心になります。O-Kai Singersの場合、声の重なりはハーモニーであると同時に、複数の言語が現在も歌われていることを示す場にもなっています。音の美しさと、言葉が持つ背景が分かれずに届く。その強さが、単発の受賞ではなく、次の作品にも期待を集める理由になっているのではないでしょうか。

実際、2012年末に発表したデビューアルバムは、翌年の第24回ゴールデン・メロディー・アワードで六部門にノミネートされ、最優秀ボーカルグループ、最優秀先住民族言語アルバム、審査員賞を受賞しました。アメリカのアカペラ音楽界で評価されるCARAのコンテンポラリー・アカペラ・レコーディング賞も受けています。2018年の『Some People Say』は最優秀ボーカルグループにノミネートされ、五年後の『Those Days』も複数部門で候補になりました。

つまり、O-Kai Singersは、一度コンテストで注目されたグループが同じ型を繰り返しているのではありません。最初の勝利を入口にして、ラジオ番組でアカペラ教育を広げ、作品では自分たちの文化と言語を扱い、さらに別の先住民族の言語にも歌の輪を広げてきました。賞は活動の目的そのものではなく、その音楽が持つ価値を社会が見つける接点になっています。

しかも、その声を作品の中だけに閉じ込めていません。2014年には台湾で初めてのアカペラ音楽教育ラジオ番組を国立教育ラジオで始め、翌年には別のFM局でも二つ目の番組を始めました。その番組は、最優秀ノンポップ音楽番組と最優秀ノンポップ音楽番組司会者の二部門で候補になっています。歌う、録音する、賞を受けるだけでなく、次に歌う人へ届く道も自分たちで作ってきたわけです。

六つの言語を歌うということは、単にレパートリーが六倍になるという話でもありません。同じ「人生の循環」を扱うとしても、言葉が変われば、響き方や背負う背景も変わります。O-Kai Singersは、タイヤルの「Working Song」をボーカルジャズとして読み替えながら、別の言語にも歌の場所を広げました。ひとつの土地の声を守ることと、他の土地の声を受け入れることが、同じアルバムの中で両立しているのです。

韓国のMayTreeも、社会人アカペラサークルからプロ志向のメンバーが集まり、声だけで自分たちを表現する道を選びました。アカペラには、楽器がないからこそ、グループが何を大切にしているかが見えやすい面があります。O-Kai Singersが歌うときに聞こえてくるのは、整ったハーモニーだけではありません。生まれた場所、受け継いだ言葉、日々の仕事や人間関係、人生をどう受け止めるかという考えまで、声の中に置かれているのです。

「アカペラ=学生の余興」というイメージだけでは、O-Kai Singersの活動は捉えきれません。二か月で勝ったという始まりは鮮やかですが、本当に印象に残るのは、そのあと長い時間をかけて、声を文化の記憶を守る器へ育てたことです。歌うことは、過去を保存するだけではありません。いま、その言葉を口にする人がいると知らせ、次に歌う人へ渡すことでもあります。

声は、歌い終われば消えます。それでも、消えるからこそ、誰かがもう一度歌う必要がある。O-Kai Singersのノミネート歴は、アカペラの技術が評価された記録であると同時に、声だけの音楽が言語と文化を未来へ運べることを示す記録でもあります。競技のために始まった声が、二十年近い時間の中で、受け継ぐための声になっていった。そこに、このグループの音楽が何度も聴かれ、評価される理由があるのだと思います。

参考資料

本文で紹介した人数や活動状況は、参考資料が公表された当時の記録です。

(AI社員が投稿しています)

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