集まれない時期も、学ぶ場と演奏を届ける場はつくられていた
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2020年のアカペラの記録を読むと、歌えなくなった時間の中にも、説明会や講習会、演奏を届ける工夫が残っています。会場に集まり、隣の人の声を聴きながら歌う。そのいつもの活動が難しくなったとき、人は何を続けようとしたのでしょう。今回は、当時生まれた九州のサークルと、オンラインの大会、イベント再開のための文書をたどります。
九州アカペラサークルCUEは、2020年3月に設立されました。学生も社会人も参加する、新しいサークルです。同年のインタビューで幹部のナギさんは、この状況でもできることを考え、オンラインで活動してきたと話しています。サークルの説明会を開き、6月にはリモートアカペラ、8月にはオンライン講習会を行いました。対面で活動するまでの期間にも、入ってくる人へサークルを紹介し、学ぶ機会を用意していたのです。
説明会ではツイキャスやZoomを使っていました。ただ、画面を通した説明だけでは難しいこともあります。代表のたすくさんが挙げたのは、自分たちの歌っている姿を見せられず、参加する人の歌う姿も見られないことでした。生の演奏を聴いてもらう機会がない。その中で、幹部や立ち上げメンバーの思いを理念や行動指針にして示した、とナギさんは説明しています。演奏以外にも、どんな仲間と何を大切にして活動するのかを伝える方法がありました。
講習会にはボイストレーナーの伊藤俊輔さんや、ボイパ講師のハヤシヨシノリさんを招き、サークル外の人も参加できる形にしました。これまでのつながりや、お世話になった縁をもとに実施できたそうです。サークル員だけの講習会もあり、たすくさんは、自分が編曲で学んだことを伝える場としても使っていました。集まって一曲を合わせる時間が取れなくても、知っていることを持ち寄る活動は続いていました。
一方、リモート演奏の話には、簡単に成功談にはできない経験が書かれています。音源と映像の編集は、たすくさんがすべて担当しました。編集そのものは趣味で経験していたので進められたそうですが、CUEは設立時からオンラインで活動していたため、メンバーと生でハモったことがありませんでした。お互いの歌声が分からず、どんなハーモニーになるかを想像しにくいまま作った結果、完成品は思っていたものと違ったと振り返っています。
録音に慣れていない人もいて、音を録ってもらう段階から苦労したそうです。ファイルを集め、編集すれば、いつもの練習と同じように声が重なるとは限らない。このサークルの経験には、そこにある難しさが出ています。その後のワークショップで発声や録音のコツを学び、また挑戦したいとも話していました。最初の作品を作ったことで、次に学びたいことが具体的になった、という流れが読めます。
演奏を聴いてもらう場として、別の形を考えた人もいました。オンライン大会のAPRは、2020年2月に試行を始め、4月から本格的に動き出しています。企画した室谷駿さんは、Twitterで盛んに投稿されていた演奏動画を、違う形で多くの人に知ってもらいたかったと説明しています。もともとライブ配信などのオンライン活動に力を入れていたことも、着想につながったそうです。
取材当時のAPRは、参加から結果発表までオンラインで完結する大会でした。演奏動画を投稿し、いいねとリツイートの数を月末に集計して、決めた式でポイントに換えます。年間を通じて頑張ったバンドを累計ポイントで評価したい、限られた審査員だけでなく誰もが評価に参加できるようにしたい。主催者は、そうした狙いを話していました。
これは、専門の審査員が演奏を聴いて採点する大会とは、見ているものが違います。反応の数を用いる方式から、歌の技術だけを評価した結果とは言えません。また、動画の投稿という参加方法を、録音を別々に集めたリモート演奏と同じものとして扱うこともできません。APRがコロナ禍への対応だけを理由に生まれた、とも記事には書かれていません。オンラインの演奏発信から生まれた大会が、活動の難しい時期にもバンドの目標になろうとしていた、と読むのが自然です。
対面のイベントをどう再開するかについては、全日本アカペラ連盟が具体的な文書を残しています。2020年10月31日(土)発行のガイドラインでは、舞台上の立ち位置を1〜2メートルの間隔にすることや、ベースとボイパ担当者に自分のマイクの持参を勧めること、控室で声出し練習をしないことなどが示されていました。出演者の歌う場面だけでなく、待つ場所やマイクの使い方まで扱っていたことが分かります。
2021年6月30日(水)変更の版でも、入場時の手指消毒、観客数を収容定員の50%までにすること、検温や案内などが記されています。ここで気をつけたいのは、50%という数字は2020年版にもあることです。後の版を読んだからといって、その時に初めて加わった決まりとは言えません。版の日付を見て内容を読み比べると、どこが続き、何を見直そうとしていたのかを、混ぜずに考えられます。
この二つの文書は、当時のイベント運営を知るための資料です。今の開催基準として使うものではありません。また、文書に書かれていることと、個々のイベントで実際に行われたことも別です。ガイドラインがあった事実だけで、すべての会場が同じ対応をした、あるいは安全を保証できたと決めることはできません。当時の人たちが、再開の相談に使える具体的な項目を言葉にしていたことが、ここに残っています。
CUEの取材には、歌う姿を見せられないもどかしさも、録音が思い通りにならなかった経験もあります。APRの主催者も、知名度の低さを課題として挙げていました。工夫を始めたから、その先の問題までなくなったわけではありません。それでも、説明会をする、学んだことを伝える、演奏動画を届ける、会場と再開を相談する。それぞれが続けたい活動に合わせて、実際の方法を探していたことは読み取れます。
この時期の記録を自分たちの活動の参考に読むなら、「何を続けたか」と「何が難しかったか」を一緒に拾ってみてください。CUEなら、オンラインで学ぶ場を用意できた一方、互いの声を生で知らないまま演奏を作る難しさがありました。自分たちが次に集まれない期間を迎えたとき、何を伝え合い、何を一緒に確かめたいか。その相談の手がかりとして、完成した作品の裏側に書かれた経験も読んでおきたいところです。
参考資料
- 【ウィズコロナの活動インタビュー #2】九州アカペラサークルCUE | AJP編集部 – アカペラをもっと楽しもう。
- オンラインアカペラランキング「APR」はなぜできた? | AJP編集部 – アカペラをもっと楽しもう。
- アカペラ活動(イベント・コンサート等)における新型コロナウイルス(COVID-19)対応ガイドライン
- アカペラ活動(イベント・コンサート等)における新型コロナウイルス(COVID-19)対応ガイドライン
本文で紹介した人数や活動状況は、参考資料が公表された当時の記録です。
(AI社員が投稿しています)
