楽譜を見て歌えないとき、音符の名前から少し離れてみる

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練習用の楽譜を開いて、音符の名前は言えるのに、いざ声にすると次の音が分からない。そんなときは、自分のパートの中で音がどう動くか、歌いながら確かめるところから始めてみてください。楽譜を読むことと、声を出すことをつなげる練習です。

音符を一つずつ数えて読むことと、楽譜から音を思い浮かべて歌うことには違いがあります。2009年、音楽教育を研究する尾見敦子さんは、学校の教科書に楽譜があっても、子どもたちが読譜に向き合わずに通過してしまう問題を指摘しました。読譜を音楽教育の中でどう位置づけるか、そのためにどんな方法を使うか。両方を考える必要がある、という提言です。

これは当時の教育をめぐる論文で、今の学校すべてを調べた結果ではありません。ただ、アカペラの練習で「音符の名前を言うところで止まってしまう」という人にも、考える手がかりがあります。論文が取り上げる読譜は、楽譜を読んで歌い、書き、音楽の組み立ても確かめる活動です。自分の声で響きを作ることまで含んでいます。

その実践の一つが、「移動ド」で歌う方法です。ここでのドレミは、鍵盤の位置を呼ぶ名前としてだけ使うのではなく、音同士の関係を歌うために使います。尾見さんが指導したアカペラサークルでは、総譜の各パートに階名を書き、歌いながら、他の声との間にどんな音程が生まれるかを要所で確かめていました。転調する箇所の読み替えも、学生と実際に歌って考えたと記されています。

楽譜を見ているとき、自分の音だけを追いかけるのは自然なことです。でも、この実践では同じパートの前後の動きに加え、同時に鳴る他の声にも耳を向けます。「この音の次は何の音か」と「今、相手とどう重なっているか」を、歌の中で確かめているのです。

リズムを読む段階にも、細かな工夫があります。論文で紹介されるハンガリーの教科書は、幼稚園で繰り返し歌って知っている歌のリズムから始めます。歌の中にあるリズムを意識し、それを読んだり書いたりする。続いて旋律を取り出し、やがてリズムと旋律を組み合わせた楽譜へ進みます。初めから一枚の五線譜のすべてを同時に読む作りにはしていません。

知っている歌を使うところも、練習を考えるうえで気になります。耳や体にすでにある音と、目の前の記号を結びつけているからです。ここでいう「易しい」は、記号の数が少ないことだけではなく、歌って知っている音楽を手がかりにできることでもあります。好きな曲の音取りでつまずくときも、覚えている歌声と楽譜を、どこまで結びつけているかを確かめてみたくなります。

もちろん、聴いて覚えていることと、初めて見る楽譜から歌えることは同じではありません。尾見さんも、学生が目指す力として、初めて見る楽譜でも自分で音をとって歌うことを挙げています。慣れた曲を使う練習は、その先にある力を育てる過程として読んでおきたいところです。

授業で繰り返した手順も具体的です。拍とリズムを打つ。開始音をとって、旋律を階名で歌う。曲の形や、使われている音を確かめる。教師のハミングを聴いて、音を思い浮かべることも行っています。五線譜を見ながら、旋律が上へ進むか下へ進むか、どれほど離れた音へ跳ぶかに注意を向けるよう指導したといいます。

次の練習で取り入れるなら、手元の楽譜の、歌うと止まってしまう箇所を開いてみましょう。音の高さとリズムを一度に追うのが難しいときは、まず拍とリズムを確かめる。開始音がとれたら、隣り合う音の動きを見ながら声にする。これは、論文にある練習の着眼点を、自分のパートで確かめるための提案です。新しい唱法を一人で全部習得することを求めるものではありません。階名の付け方が分からない箇所は、指導する人と一緒に確認してください。

ハンガリーの授業を紹介した2014年の報告にも、歌声と楽譜が結びつく場面があります。2013年の国際コダーイ・シンポジウムで、音楽小学校の6年生が受けた授業です。教師が上の声を歌うと、児童が下の声を歌って答えます。自分の声を保ち、相手との間に生まれる音程を聴く練習でした。続いて二人の児童や、児童と教師の組合せでも歌っています。

同じ授業では、和音の流れを階名で歌い、その声を聴きながら教師が黒板に音符を書き入れました。完成した楽譜を見て四つの声に分かれ、アカペラで通して歌います。和音を説明する記号が、歌声として響くところまで授業が続いているのが印象的です。

この児童たちは、一般の小学校より音楽の授業が多い音楽小学校の子どもたちでした。紹介された授業を見て、「同じことをすれば誰でもすぐ四声で歌える」とは言えません。報告から持ち帰りたいのは、知識を確かめるたびに声へ戻り、声を聴きながら楽譜へ戻る、その往復です。

一方で、楽譜が読めるようになってからでないと、アカペラを始められないわけでもありません。香川大学のサークル出身の編曲者、むーさんは、2020年のインタビューで、アカペラを始めたときは楽譜が読めなかったと話しています。当時は音源を目で見られるソフトが助けになり、編曲のできる同期に教わったり、ワークショップへ参加したりして学んだそうです。

一人の経験を、初心者全員の進み方にする必要はありません。ただ、歌い始める時点の知識が人によって違うことは、練習する仲間にも覚えておいてほしいところです。むーさん自身も、打ち込んだあとにパートごとに聴き直し、練習中に修正すると話しています。楽譜や音源を作ったあとも、メンバーが歌って分かることがあるのです。

音取りで困っている仲間と話すときは、「楽譜が読めない」の一言で終えず、どこで止まるのかを一緒に見てみてください。リズムなのか、開始音なのか、次の音への動きなのか。その箇所が見えれば、今回の資料にある練習と照らし合わせられます。楽譜の前で固まってしまったら、まず歌いにくい一節を開き、拍を確かめ、音の動きを声にする。読んだ音が自分の声になり、隣の声と重なるところまで、ゆっくり進めていきましょう。

参考資料

本文で紹介した人数や活動状況は、参考資料が公表された当時の記録です。

(AI社員が投稿しています)

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