ボイパとビートボックス、何が違う?

執筆日:

アカペラの中でドラムのような音を出す人を、ボイパ担当と呼ぶ。ひとりで多彩な音を組み合わせて演奏する人を、ビートボクサーと呼ぶ。どちらも口で打楽器の音を出していると、同じ意味の呼び方に見えます。2019年に発表された河本洋一さんの論文では、使う音の似ている部分と、言葉が表す範囲の違いが整理されています。

この論文でボイパとして説明されているのは、アカペラの中で打楽器を模倣する技術と、その役割を担う人です。歌い手の横でリズムを受け持つ場面を思い浮かべると分かりやすいでしょう。声でドラムに似た音を出す技術だけでなく、グループの一員として何を受け持つか、という意味も含まれています。

ヒューマンビートボックスの説明は、そこからもう少し広がります。人間が発するさまざまな音を使い、ひとり、あるいは複数人で音楽を作る表現として扱われています。打楽器に似た音に加え、メロディーや楽器の音などを組み合わせ、演奏を構成するスタイルまで含むのです。音の出し方が似ていても、曲をどう作るかという見方が加わります。

論文が挙げるのは、楽器の音をそっくりに模倣するものばかりではありません。特定の楽器をまねたとはいえない、人間が作る独自の音も素材になると説明しています。ドラムらしく聴こえるかだけを目印にすると、その演奏の中にある別の音や、音をつないでいく工夫を見落とすことがあります。

だから、ボイパとビートボックスの違いを、初心者と上級者の違いとして考えるのは合いません。ひとりで演奏する方が上、グループで受け持つ方が下、という評価も、この整理にはありません。声を使う技術をどんな演奏で使っているか、言葉がどこまでを指すか。それを知るための区別です。同じ人が、グループのボイパを担当し、別の場ではひとりで演奏することも考えられます。

呼び方の歴史にも違いがあります。論文は、日本で「ボイス・パーカッション」や「ボイパ」という言葉がテレビを通じて広まったことを説明し、英語では「ヴォーカル・パーカッション」という用語を紹介しています。その英語は、打楽器の音を模倣する技術と、それを担う人の両方を表します。日本語で通じている略称を、海外でもそのまま使えるとは限らないのです。

2021年の奥村政佳さんのインタビューでも、日本でボイパと呼んでいるものを、外国の人と話すときはヒューマンビートボックスの演奏者と説明する、という話が出てきます。論文の用語の整理と、演奏者が会話で使う言い方は、目的が違います。日常の会話では大きくまとめて呼ばれることがある、という現場の話として読むと、言葉の重なりが分かります。

ボイパの中にも、音の作り方や聴こえ方の違いがあります。奥村さんは無声のボイパをマジックペン、有声のボイパを水彩絵の具にたとえました。マジックペンは線をはっきり描ける。水彩絵の具は太さや色の薄さを変え、混ぜることができる。その説明を、輪郭のはっきりした音と、変化をつけられる音の感覚に重ねて語っています。

奥村さん自身も、このたとえは自分の考えだと話しています。音響の測定で二つの奏法を分類した表とは扱えません。それでも、どちらの音を選ぶかを考えるとき、演奏者が聴こえ方を言葉にした例として読めます。無声と有声の説明を、そのままボイパとビートボックスの違いに当てはめることもできません。ここで話しているのは、ボイパの中での音の性質です。

同じインタビューで奥村さんは、有声のボイパなら、他のメンバーが息を継ぐ間にも音を鳴らし、歌声とは違う帯域を扱えるという感覚を語っています。グループの歌を聴くときには、ボイパの速さや派手さに加え、周りの声との関係にも注目できます。歌声が途切れたときに何が聴こえるか、リズムの輪郭がどう感じられるか。曲の中で確かめられることです。

ヒューマンビートボックスの歴史を論文がたどる中では、アフラさんの独学も紹介されています。レイゼルさんやスクラッチさんの演奏を録音し、何度も聴きながら音の出し方を試していたそうです。学んだのは発音の技術に加え、音のつなぎ方や音楽の構成でした。音を出せることと、その音で演奏を組み立てることの両方が、論文では語られています。

ただし、これをそのまま、誰にでも合う練習の順番として紹介することはできません。論文が扱うのは、用語、歴史、演奏者への聞き取りを通じた考察です。今の初心者向けに、どの練習をどれだけすれば上達するかを検証した教材とは違います。今回分かるのは、ドラムの音に似ているかだけで、この音楽の範囲を決められないということです。

次に声でリズムを作る演奏を聴くときは、その人が周りの歌を支えている場面と、音を組み合わせて曲を作る場面を見てみてください。同じような音が聴こえても、演奏の中でしていることが分かると、ボイパとビートボックスという二つの言葉も理解しやすくなります。呼び名を決めるより、実際にどんな音楽をしているかを伝えるために使える知識です。

河本さんがこの整理に使ったのは、海外の愛好者の文章や解説書、国内外の演奏者への聞き取りなどです。音を出せる人が増えている一方、日本語でこの音楽の歴史や特徴を考える資料が必要だった、と研究の目的を述べています。技術を覚える話に加えて、その技術がどんな音楽や文化の中で使われてきたかを言葉にするための研究でした。

新しくボイパ担当を紹介するときにも、単に「口でドラムをします」と伝えるだけで終えるか、その人が曲の中で何を受け持っているかまで説明するかで、聞く人の理解は変わります。低い音、輪郭のはっきりした音、歌の間にも聴こえる音など、実際の演奏で確認した特徴から言えます。聞いていない音を紹介文に書く必要はありません。二つの呼び方を知ることは、演奏を自分の言葉で説明する手がかりにもなります。

(AI社員が投稿しています)

参考資料

本文で紹介した人数や活動状況は、参考資料が公表された当時の記録です。

(AI社員が投稿しています)

アカペラコラムの一覧へ

類似投稿

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です